
猫を飼っていると、いつなんどき体調を崩してしまうかは分かりません。
そのときにしっかり看護してあげるためには、どういった病気になりやすいのかを理解しておく必要があります。
この記事では、猫がなりやすい病気を、季節や年齢などに分けてお伝えしています。
愛猫の病気について不安がある飼い主さんは、ぜひ読んでみてください。
季節によって多い病気
季節によって多い病気は異なります。
春や秋は気候的に過ごしやすいので、夏や冬に比べると病気は少ない傾向にあります。
一方で、夏や冬は温度のみならず湿度も関連して、調子を崩してしまう子が多いです。
暑い時期に多い病気
暑い時期には、熱中症がとても多いです。
完全室内飼いの猫では生じにくいですが、クーラーが作動しなかったり、水をうまく飲めない子猫やシニア猫で発症しやすいです。
また、鼻がつぶれている猫種であるペルシャやエキゾチックショートヘア、長毛種や太っている子でも多く発生します。
ぐだーっと倒れていたり、口を開けて呼吸をしていたりする場合には、熱中症の可能性があります。
清潔な水を部屋のあらゆる場所に用意し、室内の温度は愛猫の様子をみて適温に調整しましょう。
寒い時期に多い病気
寒い時期には、飲水量が低下することにより泌尿器トラブルが増えます。
特にオス猫では、『尿道閉塞』といって尿道に結石や炎症産物がつまってしまう病気によくなります。
尿が出ないために、『尿毒症』という命に関わる状態となることもしばしばあります。
また、頻尿になる、尿に血が混じっているという症状である膀胱炎もよくみられます。
尿のトラブルは、尿検査で早期発見できる場合が多いため、定期的な検査をおすすめします。
年齢による老化の病気
高齢になると、
- 変形性関節症
- 腎臓病
といった病気がよく見られます。
変形性関節症
主に中高齢から高齢の子で発症する病気です。
猫は病気を隠す傾向にある動物ですので、分かりづらい場合も多いです。
今までいた高い場所に行かなくなった、ジャンプを嫌うようになった、なんとなく歩き方がぎこちない…といったことで発見されます。
10歳以上の高齢猫の約60%に変形性関節症が認められたとの報告もあります。
完治する病気ではありませんが、体重管理や消炎鎮痛剤の投与で痛みを和らげてあげることができます。
また、適度な運動で関節を支える筋肉を強化することができ、関節の可動性が改善される場合もあります。
腎臓病
高齢の猫といえば腎臓病というくらい、猫は腎臓病になりやすい動物です。
腎臓病には、急性腎臓病と慢性腎臓病があります。
急性腎不全は急激に腎臓の機能が低下する病気で、慢性腎不全は、数か月から数年の年月をかけて腎臓の働きがゆっくりと悪くなる病気です。
慢性腎不全は中高齢の猫がなることが多く、急性腎不全は若い猫でもなる場合があります。
慢性腎臓病の初期には、尿をたくさんして、水をたくさん飲むといった症状がみられます。
猫の慢性腎臓病は治らない病気であるため、病気の進行を緩やかにすることが治療のメインとなります。
食事療法や投薬治療、皮下補液などにて治療を行います。
早期発見ではやめの治療介入ができるため、愛猫の飲水量や排尿量についてはしっかりチェックしましょう。
子猫に多い病気
子猫に多い病気は、
- 猫風邪
- 寄生虫による下痢や軟便
- 低血糖症
です。
猫上部気道感染症(猫風邪)
猫上部気道感染症は、猫カリシウイルスや猫ヘルペスウイルス1型などが原因となる鼻から喉にかけての感染症です。
くしゃみや鼻水、涙など風邪のような症状を示します。
抵抗力の弱い子猫や多頭飼育の場合などで多く見られます。
ワクチン接種で予防ができる病気もあるので、動物病院のワクチンプログラムにしたがって接種を受けるようにしましょう。
寄生虫による下痢や軟便
子猫は寄生虫による下痢や軟便をしやすい傾向にあります。
母猫の胎内で感染したり、母乳から感染することもあります。
特に外猫の子猫は、高率で寄生虫の感染をしています。
検査をして駆虫薬を投与すればほぼ治りますので、変調があった場合には、便を持って動物病院で検査を受けましょう。
低血糖症
子猫のうちは、食べられない日があったり、不適切な食事によって、容易に低血糖症になってしまいます。
子猫用の適正なキャットフードを与え、体重の増加があるかを毎日しっかりチェックしましょう。
食べられない場合には、栄養剤やブドウ糖をなめさせる場合もあります。
食事をうまく摂れない、ぐったりしている場合には、受診をしましょう。
診察する事が多い病気
診療することが多い病気は、動物病院によって異なります。
いわゆる地域の動物病院でよくみられる病気の一例としては、
- 下痢や嘔吐など胃腸トラブル
- 泌尿器トラブル
といったことがあります。
下痢や嘔吐など胃腸トラブル
嘔吐や下痢などの胃腸トラブルで来院される子はよくいます。
- 毎日のように吐いている
- 食欲や元気がない
- 水様便をしている
- 便に粘液や血液が混じっている
などといった稟告が多いです。
もちろん元気でピンピンしている子もいて、症例それぞれで重症度は異なります。
原因自体はたくさんあり、
- 季節や温度の変化
- 環境や食事の変化
- いつもと違うものを食べた
- 何かしらの病気がある
などなど、すぐに原因を突き詰めることは難しかったりもします。
一般的には、身体検査やエコー検査、必要に応じて血液検査などを行って状況を把握していきます。
軽度の場合には薬の処方で済むことが多いですが、症状が重い場合には点滴処置を含め入院する場合もあります。
泌尿器トラブル
猫の祖先は砂漠に生きる動物であったため、貴重な水分を失わないよう、尿を濃く作る習性がありました。
そのため、腎臓に負担がかってしまうという特性があり、それが現代を生きる猫でも引き継がれています。
猫における泌尿器トラブルは、腎臓病や下部尿路疾患が非常に多いです。
腎臓病は上記でお伝えした通りで、下部尿路疾患は膀胱から尿道までの下部尿路に起こる、様々な病気や症状の総称です。
猫の下部尿路疾患には、
- 尿路結石症
- 特発性膀胱炎
- 尿道閉塞
- 膀胱や尿道の腫瘍
- 感染症
などがあり、これらが単独、もしくは複数の病気がからみあって発症します。
何度もトイレに行く、血尿をしている、トイレに行くけど一滴も出ないなどは下部尿路疾患の可能性があり、早期の受診が必要となります。
愛猫の異常に気がついたら動物病院へ
「何度もトイレに行っているな…」
「最近、飲水量が増えているな…」
など愛猫の異常に気がついた場合には、速やかに動物病院にうかがいましょう。
少し様子をみていると、一気に悪くなってしまうこともしばしばあります。
飼い主さんしか分からない不調もよくあります。
「何となく変だな…」と思ったら迷わず受診をしましょう。
【まとめ】猫の病気について
猫のかかりやすい病気は、季節や年齢によって異なります。
いつも一緒に過ごしていると、愛猫の異変に気づきにくくなる傾向があります。
いま一度、しっかり様子を観察し、不安なことや変調があったら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
参考資料
- 辻本元、小山秀一、大草潔、中村篤史、猫の治療ガイド2020、EDWARD Press(p75-p78・p559-p561・p201-205)