
犬を飼っていると、いつなんどき体調を崩してしまうかは分かりません。
そのときにしっかり看護してあげるためには、どういった病気になりやすいのかを理解しておく必要があります。
この記事では、犬がなりやすい病気を、季節や年齢などに分けてお伝えしています。
愛犬の病気について不安がある飼い主さんは、ぜひ読んでみてください。
季節によって多い病気
季節によって多い病気は異なります。
春や秋は気候的に過ごしやすいので、夏や冬に比べると病気は少ない傾向にあります。
ただ、フィラリアや狂犬病の予防注射、健康診断などで来院するケースが多く、その際になにかしらのトラブルが見つかる場合もあります。
暑い時期に多い病気
暑い時期には、熱中症がとても多いです。
室内にいてもクーラーがうまく作動していなかったり、散歩中に発症することもあります。
特に外飼いの犬や、鼻がつぶれている犬種であるパグやフレンチブルドッグでは発症しやすい傾向にあります。
過剰にハアハアしていたり、よだれが多くなっている場合には、熱中症の可能性があります。
こまめに水分をとり、室内の温度は愛犬の様子をみて適温に調整しましょう。
寒い時期に多い病気
寒い時期には、飲水量が低下することにより泌尿器トラブルが増えます。
「おしっこが出ません…」「何度もトイレに行きます…」といったことが多く、膀胱炎や尿道閉塞といった病気が考えられます。
おしっこが一滴も出ない病気である尿道閉塞は、命に関わることもあり、早急な処置が必要となります。
一般的な治療としては、抗生剤の投与や食事の変更で対応することになります。
尿のトラブルは、尿検査で早期発見できる場合が多いため、定期的な検査をおすすめします。
年齢による老化の病気
高齢になると、
- 変形性関節症
- 認知症
といった病気がよく見られます。
変形性関節症
主に中高齢から高齢の子で発症する病気です。
いつも元気だった子が足を引きずって歩いていたり、散歩を嫌いになった、寝ていることが増えたなどは、どこかに痛みを抱えている可能性があります。
10歳以上の高齢犬の約20%に変形性関節症が認められたとの報告もあります。
完治する病気ではありませんが、体重管理や消炎鎮痛剤の投与で痛みを和らげてあげることができます。
また、適度な運動で関節を支える筋肉を強化することができ、関節の可動性が改善される場合もあります。
認知症(認知機能不全症候群)
排泄を失敗したり、ワンワンずっと鳴いていたり、家の中で迷ってしまったり…
犬の認知症では、人の認知症と同じような行動障害が出ることが多いです。
根本的な治療はないので、環境の改善と合わせて精神安定剤などの投薬を行い、生活を補助していく必要があります。
愛犬の介護に飼い主さんが疲れてはててしまうことも多いので、家族や動物病院に頼るなどして付き合っていきましょう。
子犬に多い病気
子犬に多い病気は、
- ケンネルコフ
- 寄生虫による下痢や軟便
- 低血糖症
です。
ケンネルコフ(犬伝染性気管気管支炎)
ケンネルコフとは、いわゆる『犬の風邪』のことです。
原因となる病原体は、
- 犬アデノウイルス2型
- 気管支敗血症菌
- 犬パラインフルエンザウイルス
- 犬呼吸器コロナウイルス
- 犬ヘルペスウイル1型
- 犬ニューモウイルス
- 犬インフルエンザウイルス
- Mycoplasma cynos
などの複数の種類の病原体が関与しています。
母親からの初乳による免疫が切れる生後60日齢程度は、これらの感染症になりやすい時期です。
ワクチン接種で予防ができる病気もあるので、動物病院のワクチンプログラムにしたがって接種を受けるようにしましょう。
寄生虫による下痢や軟便
子犬は寄生虫による下痢や軟便をしやすい傾向にあります。
母犬の胎内で感染したり、母乳から感染することもあります。
検査をして駆虫薬を投与すればほぼ治りますので、変調があった場合には、便を持って動物病院で検査を受けましょう。
低血糖症
子犬のうちは、食べられない日があったり、不適切な食事によって、容易に低血糖症になってしまいます。
子犬用の適正なドッグフードを与え、体重の増加があるかを毎日しっかりチェックしましょう。
食べられない場合には、栄養剤やブドウ糖をなめさせる場合もあります。
食事をうまく摂れない、ぐったりしている場合には、受診をしましょう。
診察する事が多い病気
診療することが多い病気は、動物病院によって異なります。
いわゆる地域の動物病院でよくみられる病気の一例としては、
- 下痢や嘔吐など胃腸トラブル
- 外耳炎
- 足を痛がるなど骨格のトラブル
といったことがあります。
下痢や嘔吐など胃腸トラブル
嘔吐や下痢などの胃腸トラブルで来院される子はよくいます。
- 毎日のように吐いている
- 食欲や元気がない
- 水様便をしている
- 便に粘液や血液が混じっている
などといった稟告が多いです。
もちろん元気でピンピンしている子もいて、症例それぞれで重症度は異なります。
原因自体はたくさんあり、
- 季節や温度の変化
- 環境や食事の変化
- いつもと違うものを食べた
- 何かしらの病気がある
などなど、すぐに原因を突き詰めることは難しかったりもします。
一般的には、身体検査やエコー検査、必要に応じて血液検査などを行って状況を把握していきます。
軽度の場合には薬の処方で済むことが多いですが、症状が重い場合には点滴処置を含め入院する場合もあります。
外耳炎
耳が臭う、かゆがっている、床にこすりつけている…など、耳のトラブルもよくあります。
鼓膜から外側の『外耳』に炎症が起きる『外耳炎』は、耳のトラブルで最も多く、綿棒や洗浄液で掃除をし、点字薬や内服薬にて治療を行います。
キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、アメリカン・コッカー・スパニエルのような耳が厚くて垂れ耳の犬種に多い傾向にありますが、どの犬種でも発生します。
定期的な耳掃除で早期発見をしましょう。
足を痛がるなど骨格のトラブル
歩き方が変、足を挙げている…などの骨格のトラブルもよくあります。
また背骨を丸めている、上が向けないなど、神経の異常を示唆する症状がある場合もあります。
診察室での動きや検査、飼い主様の稟告と合わせて判断していきます。
鎮痛剤や安静で治る場合も多いですが、神経の異常が疑われる場合にはCT検査やMRI検査などを行うこともあります。
愛犬の異常に気がついたら動物病院へ
「食欲がないな…」
「くしゃみや鼻水が出ている…」
など愛犬の異常に気がついた場合には、速やかに動物病院にうかがいましょう。
少し様子をみていると、一気に悪くなってしまうこともしばしばあります。
飼い主さんしか分からない不調もよくあります。
「何となく変だな…」と思ったら迷わず受診をしましょう。
【まとめ】犬の病気について
犬のかかりやすい病気は、季節や年齢によって異なります。
いつも一緒に過ごしていると、愛犬の異変に気づきにくくなる傾向があります。
いま一度、しっかり様子を観察し、不安なことや変調があったら、すぐに動物病院を受診するようにしましょう。
参考資料
- 辻本元,小山秀一,大草潔,中村篤史,犬の治療ガイド2020、EDWARD Press,p690-p693,p242-243